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『第3階級論』

社会システム研究所　三宅崇昭

新たな歴史の潮流、新たな可能性

　I.第3階級はどこから生まれるか
　II.第3階級は如何に生きるか
　III.資本市場主義の展望
　IV.新たな可能性を求めて

　2000.11.　8 改定
　2000.10.24 改定
　2000. 9.26 改定

I.第3階級はどこから生まれるか

　学校に行かない。大学に行かない。会社に行かない。そんな若者たち。
　リストラされた中高年、60代無職。

■不登校児童生徒13万人、高校中退12万人（岡田盾夫氏論文大学不登校を考える・ノート）

■大学生について言えば（上述岡田盾夫氏論文）「最低年限内の卒業時にほぼ20％前後の留年者が在り、以降漸次減少していくとしても、終局的にはなお10％前後の非卒業者が残存するということである。（母数約55万人）

■たとえば高卒者に占める「無業者」の占める割合は、92年の4.7％から漸増、99年には9.3％、実数にして12万7千人にのぼった。（文部省・学校基本調査）

■2000年10月9日朝日新聞
　「文部省の調査によると、昨春の中学、高校、大学卒業者のうち、「無職」は約30万人。また、労働省の外郭団体が調べた97年の「フリーター人口」は約135万人で、引きこもりの若者が相当数含まれるとみられる。はっきりした調査はないが、関係者の間では、引きこもりの若者は100万人に達するといわれる。」

■総務庁が発表した1999年平均の完全失業率は4.7％、317万人。離職状況は非自発的失業が100万を超えている。

■雇用形態別雇用者数（万人）

西暦月	正規の職員従業員	同前年同月比	パートアルバイト	同年同月比	嘱託(派遣) その他	同年同月比
89．2	3，452		656		161
90．2	3，488	36	710	54	171	10
91．2	3，639	151	734	24	163	－8
92．2	3，705	66	782	48	176	13
93．2	3，756	51	801	19	185	9
94．2	3，085	49	800	－1	171	－14
95．2	3，779	－26	825	25	176	5
96．2	3，800	21	870	45	173	－3
97．2	3，812	12	945	75	207	34
98．2	3，794	－18	986	41	187	－20
99．2	3，688	－106	1，024	38	201	14
00．2	3，630	－58	1，078	54	195（33）	27

資料：総務庁労働力調査平成12年3月速報

　この表からも雇用の流動化が確実に進みつつあるのがよく解る。

■フリーター150万人テレビ報道

■7・5・3の法則
　会社に勤め始めて、3年以内に会社を辞める％を示す割合。中学卒の場合7割、高校卒の場合5割、大学卒の場合3割、という。

　　学　校　　　　　　　　株式会社
┏━━━━━┳━━━━━┳━━━━━┓
┃　　　　　┃　　　　　┃　経営者　┃
┃小、中、高┃　　大　　┣━━━━━┫
┃　　　　　┃　　　　　┃　労働者　┃
┗━━━━━┻━━━━━┻━━━━━┛
↓　　　　　↓　　　　　↓　　　　　↓
ドロップアウト　　A　　　　　　　　　B
┌─────────────────┐
│　　　　　　3　階　級　　　　　　│
└─────────────────┘

　このドロップアウトを持って、第3階級とみなす。「21世紀難民」の表現あり。パラサイト階級というと識者または左翼からおこられるか？

1．市場経済の発展による絶対的全体的富裕化を背景にしている。（でないと生活できないはず。）
2．もはや資本賃労働関係にすら組み入れられない。
3．ドロップアウトAの原因

*もはや株式会社が若者にとって魅力ある働き場所でなくなった。
　何故か。産業資本主義が成長をめざして健全に発達していた時代の株式会社形態は国民に豊かさをもたらし、国民にとって倫理の中心になりえた。それは同時に労働と勤勉の肯定であった。1980年代以降の世界の市場経済は明らかに変質している。信用資本の膨張の結果、「お金のやり取り技術、金融技術」のほうが、圧倒的に勤勉より「よほど得な」時代を作り上げてしまった。その方向に同化出来ない人はどうするのか。一部の歴史感性の乏しい金融エリートを除いて勤勉を倫理とする国民はよりどころを失ってしまった。
　信用資本の膨張＝投資資本は自己の増殖に優れていてもすでに、社会を代表する共同理念たりえなくなっているのである。

*また同様に株式会社社員を懸命に育成する「学校」も勉強＝勤勉＝幸福というテーゼではモラールの維持ができなくなったのである。見え見えのうそであることがバレてしまったのである。不登校の大学生、高校生、中学生。学校も資本の表示するモラールによっては生徒、学生をひきとどめれないのである。当然卒業しても就職しない層も出てくる。

*物象支配を嗅ぎ取った者の本源的人間性に基づく反抗
　もともと人間は、自然との関係で協同労働によって生産物を取得して生きてきた。
　その意味で自由であり支配されないで生きてきた。
　お父さん　　お金を稼ぐことで精一杯
　お母さん　　お金を稼ぐ様子供を育てることに唯一の価値を置く。
　子ども　　　お金で物が簡単に買える自由さは得ている
　　　　　　　市場では上昇期待を膨らます情報が横溢している
　　　　　　　初めは期待に応えられても、途中で上昇期待には応えられない挫折がおとずれる。
　　　　　　　一部の者は応えられるが。
　　　　　　　両親の上昇期待支配＝お金による支配は続く、両親も市場情報のなかで期待をもち続ける。
　　　　　　　これに子どもは本能的に抵抗・お金にも価値を見出せない。

*忘れてはならないのは中高年のリストラ世代である。
　彼らは30年以上会社を信じて会社のために忠誠を尽くし続けてきた。ここにきて高賃金という理由でいとも簡単に悪者扱い失業者となる。社会的には、これをリストラする経営者が正義になってしまった。だからリストラされた中高年管理者たちは戦い始めている。管理職ユニオンというかたちで。開き直りの人生が何を生むかはまだわからない。

　　■2000.20.23 NHK「中高年の自殺」から
　　　　　自殺者がバブル崩壊以後、急激に増えている。
　　　　　失業率の急上昇に連動して急上昇している。
　　　　　自殺率は世界的にも非常に高いレベル。
　　　　　　　自殺者の数　1997年　24391
　　　　　　　　　　　　　1998年　32863
　　　　　　　　　　　　　1999年　33048
　　■1999.7.2 日経
　　　　　1998年の自殺者は統計をとりはじめた47年以降、最悪となった
　　　　　ことが警察庁のまとめで分かった。負債や失業などの「経済・
　　　　　生活問題」を苦にした自殺が前年比7割増の6058人、仕事の失
　　　　　敗や上司の叱責といった「勤務問題」が5割増の1877人に上り
　　　　　長引く不況やリストラなどの経済・企業環境の変化を反映する
　　　　　結果となっている。
　　■1999.3.26　朝日
　　　　　ブリジストンの社長室で自殺した元社員が残した手紙
「入社以来30有余年、ブリジストンと運命共同体として寝食を忘れ、家庭を顧みる暇も無く働き、会社を支えてきた従業員の結晶が今日のブリジストンをきずきあげてきたのである。」「役職定年者ならび57歳到達者が無条件に退職勧告を受けねばならぬことに断固抗議する。しかも、退社しないなら、さらに給料を半減していくやり方はまさに仕打ちである。」

II.第3階級は如何に生きるか

■社会的歴史的位置付けを自覚する。これは近代市民社会の発展と関係ある。
　資本賃労働関係とはべつに関係を遮断したところで如何に自立した生活を樹立するかがキーポイントである。自立したコミュニティの確立である。第三階級による抵抗コミュニティである。
　例えば、LETSの可能性を私はそこに見ようとしている。

■価値観を転換する。

■たとえば農業の様に、自己の労働が自己の生産物を生み出す労働につきそれは自分たちで　消費する。このコミュニティを如何に形成するかだ。

■協同生活によるコストセービング、協同労働によってサービス労働を自分たちの中へとりこむ。（炊事、洗濯はほとんどやる。生協活動）

■対価がお金でなく「感謝」によってもたらされる労働につく。しかし貨幣収入にはならないが。これが生かされる協同体を作ればよい。

■粗衣粗食をもって健康を維持する。

■「中高年の自殺を考える会」を作り、社会的主張をくりひろげる。自殺は確信に基づいた社会的主張である。抗議である。弱者だから自殺した、かわいそう、助けてあげなければ的発想を拒否する。そして自由な「中高年ユニオン」を組織化する。

※いやらしい観点かもしれない
　ドロップアウトを生むことによって第3階級を第1階級、　第2階級はそのサ－ビス労働に使う。第1階級とは資本家経営者＆経営管理者層、第2階級は労働者層をさす。

※ドロップアウトBの問題点　「60代無職」と呼ばれる。
　働きたくても働く場所がない（資本賃労働関係にすらはいれない）
　足元をみられ極端なチープレイバーをしいられる。
　よって社会関係が結べない。長寿社会になり死を受け入れるまでには10年も20年もある。
　NPOにもお金がかかる。農業をしたいがこれは年金の持ち出し。さまよえる民である。
　介護保険制度への批判
　　　なぜ保険料の支払いがお金なのか、
　　　労働で支払い労働で受益するシステムがつくれないのか。
　　　高齢者の働く場所にもなる。
　　　全てをお金を媒介にするシステムしかつくれないのか。
　　　若い時代に介護労働を貯労しておき、
　　　自分が必要になって使えるシステムをつくればいい。

III　資本市場主義の展望

■1980年代以降の資本主義の段階を資本市場主義と定義する。生産資本は完全に市場の売買の対象である。

■IT革命、金融資本市場の発達はさらに富を一極集中させ雇用を二極分解させ、第3階級は傾向として増大する。
　特徴（アソシエ21,IV．「21世紀資本主義と新しいライフスタイル」佐々木政憲から）

※貨幣資本循環の生産資本支配と雇用の流動化促進
　「まず第一に、資本循環の情報ネットワーク化は生産資本や消費形式にとどまらない。いや、それよりはるかに速いスピードで、貨幣資本循環の情報ネットワーク化が進展している。しかも貨幣資本循環は生産資本循環から自立し肥大化し、生産資本循環を揺るがすまでになっている。」
　「たとえば、世界の貿易額は年間約6兆ドルであるが、世界の外国為替取引額は一日だけで1兆6000億ドルを上回る。年間では600兆ドルにも達する。財やサービスの取引額を100倍も上回るマネーが循環していることになる。」「巨大な貨幣資本循環がサイバー空間を瞬時に移動し、短期間に巨額の金額を生み出すというカジノ経済の中で、貨幣資本に代弁される市場の声が生産資本の循環を支配するようになる。」「それは生産的投資にたいして循環の短期化とスピード経営を押し付ける。それはまた、労働市場を流動化させる。必要なときに必要な労働力を調達するというフレキシブルな労働市場である。」「こうして、派遣・パートなどが、スピード経営に対応した柔軟な雇用形態として展開する。」
　生産資本を貨幣資本（投資資本と筆者は呼ぶ）が凌駕しつつあるのはつぎのデータからもわかる。2000.7.1　日経によれば、1998年末から2000年3月末までの1年3ヶ月の間で日本の経常収支の黒字は15兆円であったが、この間対外純資産は63兆円を失っている。米国資本の日本株取得が進んだことにより、その値上がり益が経常収支の4倍強におよぶのである。

※砂時計型賃労働の形成（寺島実郎「正義の経済学」中央公論による引用）
　「現在のアメリカの雇用状況は失業率は低下しているが、レイオフ（人員整理）は減らないという構図を特徴としている。」「92年の失業率7.5％から、99年には4.1％にまで低下したが、これは実数で600万人の雇用増である。他方、アメリカの大企業たるフォウチュン50社は中間管理職を中心として300万人以上のすさまじい人員削減を実現した。それでも全体で300万人の雇用増である。これによって年収3万ドル前後のチープジョップは山ほどふえた。しかし、年収8万ドル以上のアッパーミドルが満足する仕事は増えていない。」「単純化していえば、IT革命を利用した新資本主義が理想とする企業経営体制は、少数の経営者とそれをとりまく高度な専門スタッフ（MBA、弁護士、システム開発者など）と大多数のマニュアルに沿って現場を支える単純労働者群とによって構成される。近年ではブルーカラー（肉体労働者）、ホワイトカラーにならんで「カーキカラー（システム管理者）が増加しつつあるが、これとて高度専門スタッフの仲間に入れるわけではない。」
　佐々木政憲はつづける。「それは、賃金生活者が二極に分裂した砂時計型の社会である。中央部分がくびれて狭くなり、少数のエリートからなる上層部分と大量のノン・エリートで構成される下層部分へと両極に分裂した状態である。IT革命と生産性上昇の成果は競争の勝利者である上層部が特権的に享受する。」

※砂時計型賃労働から排出される第三階級
　かくして第三階級は賃労働を拒否するか、レイオフされて排出されて、形成される。

IV.新たな可能性を求めて

　この第3階級を歴史の新たな潮流とみて、新しい可能性を見ようとしている。
1945年以降　戦後労働運動の高揚、原水爆禁止運動
1960年　　　60年安保による活動家の輩出
1970年　　　全共闘運動による活動家の輩出
1980年　　　不毛の時代　逆に資本が完全に勝利していた時代
1990年　　　不毛の時代　日本はバブル崩壊をむかえる
2000年　　　従来とは異なった新しいタイプの活動家が生まれつつある。
　　　　　　イデオロギーにとらわれない。個人を大切にする。
　　　　　　面白ければやってみる。
　　　　　　かっての活動家たちのように
　　　　　　同世代の中の明らかに優秀な部分がここに参画しつつある。
　　　　　　これも新しい可能性をうかがわせる。

　私たちの大きな役割がある。この第3階級の潮流をよくみきわめて、個々のグループの交流の場を広げ深め、何が近代を克服するか、近代を克服するもの、それを目的意識をもって育てることである。私はその目標到達点に生産・消費協同組合を核とした共同体社会を構想するのである。

Date: 2006/1/5
Section: テーマ論文
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『第3階級論』

『第3階級論』

新たな歴史の潮流、新たな可能性

I.第3階級はどこから生まれるか

II.第3階級は如何に生きるか

III 資本市場主義の展望

IV.新たな可能性を求めて

III　資本市場主義の展望