　第1次PC講座は1997年11月に開講しました。趣意書にあるように、「近代の社会的意識形態への根底的な批判」を試み、1年間にわたり、月2回のハードな研究会を持ちました。この時出てきた結論は、科学知を超える文化知の提案でした。

　第2次PC講座は、2000年3月に始まりますが、これは1999年に設立されたアソシエ21関西に集まった人たちを対象に、表三郎さんと一緒に企画し、私の方は「協同主体とは何か」というテーマで、種々の理論を取り上げました。
　第2次PC講座の進行中に、地域通貨の立ち上げや、NPO法人ニュースタートへの関わりがあり、新しい世代が運動にどんどん登場してきていることを目の当たりにすることができました。

そこで、2001年3月より始めた第3次PC講座では、「新しい思考（文化知）」を普及することを目指した論文を作成するための協働作業の場として2年計画で進めました。ところが、この講座では、「ヘーゲル弁証法の転倒」に時間を取られ、その上心理学にも取り組んだので、「新しい思考」についてまとめる作業は進みませんでした。
　この時期に、実践の分野では大きな進展があり、W.Coサポートセンターの設立準備が始まり、サポートセンターでの研修会が行われるようになり、「新しい思考」の普及はそちらの方に委ねることにしました。

　第4次PC講座は、2003年3月から「時代の変化を知る6講」として現状分析に取り組みました。いざ手がけてみると、この間の社会の変化は私の予想を超えており、各講義は当初の設定からずれてしまうことになりました。でも振り返ってみれば、結構有意義な研究会がもてたのではないかと思っています。

　以上の経過を踏まえ、第5次PC講座について、次のような企画を提案します。

第5次PC講座開講に当たって

　1997年から開始された政治・文化講座は、年度ごとに都度独自のテーマを決めて実施してきました。今年度は、テーマを「住民主体の地域自治」とし、地域自治の方向性を明らかにしていくべき理論的課題と、先進的な自治体やNPO法人のこのテーマについての取り組みの事例研究を行います。
　また、定例研究会の他に、随時、学識経験者を招いた講演会も企画し研究の実を挙げていけるようにしていきます。

第5次PC講座実施要綱

　1）機関は、1年間とし、6回の講座をもちます。
　2）期日は、2004年5月より奇数月の第2土曜日、午後2時～6時
　3）場所は、W.Coサポートセンター共同事務所（高槻市富田町）
　4）参加費は、稼ぎの有るメンバー　　　年間　50，000円
　　　　　　　　学生、フリーター　　　　1回　　5，000円（LETSでの支払いも可）
　　　　　　　　スタッフ　　　　　　　　1回　　1，000円（LETSでの支払いも可）
　5）講演会、企画の都度詳細を連絡します。
　6）カリキュラム
　　　　　　　　テーマ：住民主体の地方自治

（講義の部）

第1講　女性学の到達段階と家族問題の解決の方向。（2004/5/8）

　最近の女性学は一時のジェンダー視角からの女性差別問題の提起と告発の段階から進んで、家族を生命の再生産のシステムとして捉え、それが性差による支配と両性の共同性の二重物としてある事の確認に基づき、解体しつつある核家族や地域社会を再編していく方向性を提示する理論的枠組みを準備しつつある。家族を地域に開く事の正当性とそのための政策的提言を明らかにしていきたい。

第2講　ケアの経済学と福祉政策のあり方。（2004/7/10）

　女性学の成果の一つがケアの経済学である。これは従来の経済学のモデルで「人」と見なされてきた「自立した個人」が、生まれてから22年間の養育と教育を経た成長期と、定年退職後のケアの必要な20年間を勘定に入れない、労働能力を持った成人男子であり、これは人間の生活の1時期のみに妥当するもので、このような「人」のモデルに基づく経済学の妥当範囲も限定されたものだという認識から出発している。福祉は従来の経済学では理論の射程に入ってこず、福祉を論じるためには別の枠組みが必要となるとケアの経済学は主張している。福祉を経済学の中心的課題と捉えるケアの経済学の視点から、地域福祉について考えていく。

第3講　環境の経済学と環境問題の解決の方向。（2004/9/11）

　環境問題の解決は、廃棄物をどう処理するかではなくて、生産の連鎖の上流から規制していくところにある。従来はこの方策について明らかではなかったが、EPRの原則は単純で、廃棄物の処理費用を製品価格に上乗せするだけの事だ。もちろん廃棄物をその製造者が回収できるシステムを作る事が必要だが、これは今でもこみ処理システムとして稼動している。問題は処理費用が主として税金で賄われているところにあり、そのために上流からの規制になっていない。EPRの原則から今の日本のごみ処理システムを改変する事が問われている。当面は容器包装リサイクル法の改正が必要だ。

第4講　労働過程の変化と主体の変動。（2004/11/13）

　産業構造の変化も著しいが、労働過程の変化と雇用の多様化も目覚しい。中国が世界の工場として台頭し、日本はサービス業中心の産業構造になる中で、労働者と生産手段との関係も変化してきている。運動の方も多様化してきているが、それらの運動がどのように合力を形成していけるのか、新たな主体形成論が問われている。

第5講　政党政治の空転と新しい自治。（2005/1/8）

　政党政治の空転の原因は官僚制の行き詰まりにある。環境問題の解決や高齢化社会への対応について日本の官僚は、高度成長時代と全く同じ手法で解決しようとしているのだ。それは産業の育成でありそのための補助金の手当てである。役人が税金で市民運動をやっている。こんな状態を何とかしないと未来は開けない。

第6講　協同組合地域社会の形成に向けての方策。（2005/3/12）

　環境問題について取り組んだ市民運動は、役人が始めるよりも20年以上前から運動を進めてきた。しかし90年代に入って、税金で給料をもらっている役人が運動の舵取りを始めた事で、市民運動は出番を失っていった。ボランティアでやっている人と、有給でやっている人とが競争すれば、有給の人にはかなわない。でも税金で市民運動やるっておかしい。役人は本来の仕事をサボっているのではなかろうか。役人がやっている事はNPOや協同組合でやれる仕事だし、そちらに任せる方がいい。日本では役人が独占している地方自治の領域を市民の手に取り戻す事が問われているが、その鍵は、市民が事業者として登場するところにある。