2002/06/11　榎原　均
　吉原さんから「恵氏のコメントについて」が寄せられていますので、UPします。今回の論争については、寄せられた論文については原則的に無編集でUPしていきます。
　ところで、論争のテンポが速いですね。私が戦車でウロウロしている間に、ミサイルが飛び交っているようです。それで、私が今書いているものについての予告がてらに、論争の大枠についての整理をしてみます。

　世の中には、かってはマルクス経済学者とマルクス主義経済学者とがいらっしゃって、前者は、宇野弘蔵さんの経済学の流れを汲む人たちで、後者は、いわゆるマルクス・レーニン・スターリン・毛沢東主義に影響された人たちだったように思われます。ところが、日本の大学で確固とした権威をもっていたこの二つの潮流は、二回にわたって根本的な試練にかけられました。ひとつは、1972年の金・ドル交換停止で、両派ともこれをIMF体制の崩壊と捉え、世界恐慌、世界危機を期待していたのです。でもそれ以降、体制の崩壊はなく、世界経済は新たな段階に入り、資本の蓄積様式もすっかり変化してきています。
　次に、1990年代初頭のソ連邦の崩壊ですね。私にとっては、金・ドル交換停止による試練の方がより重要だと思っているのですが、マルクス主義経済学ではソ連邦の崩壊の方がショックだったようで、以降、著名マルクス主義経済学者たちが、「労働価値」説と階級闘争の理論を放棄してきました。

　こうしたなかで、アナリティカル・マルキシズムが何故注目を浴びたかと言えば、数理的方法を用いて、マルクスの「労働価値」説と搾取の理論の正当性を証明したからなんですね。（このへん、門外漢なので見当はずれかも知れません。）

　でもアナリティカル・マルキシズムの流れにも色々な主張があって、この正当性の証明は間違っている、という人もいるし、また、マルクス主義経済学の方でも、「労働価値」説が正か否かで論争がおきています。

　私は、「労働価値」説をめぐる経済学のこのような議論の沸騰は、価値形態論についてのある程度の共通認識をつくりあげることで、新たな地平へと進むことが出来るのではないかと考えています。そして願わくば、価値形態論の解明を手がかりに、現在のグローバル経済を分析する信用論を提案できる研究者が現われてほしいと念じているのです。

　こんな問題意識から、論文を書き始めましたが、とりあえず、前半部分だけでも近いうちにUPします。前半部分で、頭川さんと大石さんの説を検討したのですが、結論だけを述べると、置塩モデルで価値の量的規定を与えることには無理がある、という両氏の批判には同意しますが、モデル自体が成立し得ない、とする批判は間違っていると考えています。
　だから、今回の「恵氏のコメントについて」で、吉原さんが、私の「形式論理に基づくマルクス命題の論証問題そのものを否定されているものではなく」と指摘されている点についてはその通りです。

��ε��

Return to Category | Return To Main Index

Author: admin Published: 2006/1/5 Read 2651 times