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協同組合のごみ政策(下)


協同組合のごみ政策(下)


 1)自治体のとり組み
 2)国の法制定の経過
 3)進んだ国ドイツとのちがい
 4)ごみ対策の原則
 5)協同組合の課題

1)自治体のとり組み


 環境問題の深刻化によって、国や自治体による国民の動員が試みはじめられています。例えば京都市が昨年8月に発行した小冊子『京(みやこ)・めぐるアクションプラン』によれば、市民、事業者、京都市の三者がパートナーとなって、ごみ減量化のとり組みを進めるとしています。

 それによれば、市民は「循環型社会を形作る主役」とされ、事業者は「自己処理責任、拡大生産者責任」を負うとされ、市は「市民・事業者の自主的な取り組みを応援する」とされています。

 市民に期待されているものは「ごみを出さないライフスタイルの実施、リサイクルを促進するための行動の実践」で、具体的には買い物袋の持参、リターナブル容器の商品の購入、フリーマーケット等の利用、資源ごみ収集への参加、協力、不要品の販売店への返却、再生品の積極的な利用が、あげられています。

 他方、事業者の取り組みとしては、ごみ減量の行動計画作成、オフィスにおけるペーパーレス化、簡易包装の実践、缶ビンペットボトルなどの分別排出、使用製品等の回収、リサイクル、地球にやさしい製品の開発があげられています。
 このアクションプランをそれぞれが実践すれば、本当にごみ問題は解決するのでしょうか。そうではないところに、今日のごみ問題の深刻さがあります。

2)国の法制定の経過


 国や自治体が国民を動員しようとするときには、法律による裏づけが必要です。そこで廃棄物・リサイクルに関連する法律をみてみましょう。

 まずは、1991年に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法1970年に制定)」が大幅に改正されました。このとき廃棄物の適正処理を促進するための排出抑制再生利用という観点が導入されました。さらに不法放棄が続いたので、1995年の改正で不法投棄への対策として、罰則の引き上げ、マニフェスト制度の拡大などがなされました。

 次に1991年に「再生資源の利用の促進に関する法律(リサイクル法)」が制定されました。この法律は事業者に対して、使用済み製品や副産物を廃棄物として処理するのではなく、資源として利用するよう働きかけている法律です。

 さらに、1995年には一般廃棄物のうち容積で6割、重量で3割を占める容器包装廃棄物のリサイクルについて、事業者にリサイクル(再商品化)義務を定めた「容器包装に係わる分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)」が制定されました。

 また、1998年には「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)」が制定され、2001年4月からの実施が予定されています。
 そして、こうした廃棄物・リサイクルに関連する法制度の共通する理念、考え方は1993年の環境基本法で示され、そしてこの法律に基づいて作成された環境基本計画で具体的なとり組みが提案されています。

3)進んだ国ドイツとのちがい


 ごみ問題へのとり組みで、一番進んでいる国はドイツだと言われています。今日各国から画期的だと認められているドイツの循環型社会をめざしたとり組みの出発点となったのは、1994年に制定された循環経済・廃棄物法でした。だから、法律の制定に関しては、日本に比べてそんなに先行していた訳ではありません。問題は法律の内容にありました。

 ドイツの法律では循環経済の原則として、まず、第一に廃棄物の完全抑制(リユースも含めたリデュース)の義務をあげています。次に原材料としてのリサイクル、又はエネルギーリサイクルが次善の策としてあげられています。

 つまり、廃棄物の発生抑制に全力を挙げ、次にリユース、3番目にリサイクルに力を入れる、そしてどうしても出してしまうごみについては適正処分するということが、事業者の責務として課せられているのです。

 これに対し、日本の法律は、リサイクルを重視し、また、廃棄物処理施設をいかにつくりやすくするかという観点にたっており、リサイクルの責任を業者には軽く、消費者に重く課しています。

 また、ドイツの場合、リサイクルは業者責任ですから、例えば、ペットボトルをリサイクルする費用は、ペットボトルを使った商品の価格に上乗せされます。ペットボトルを収集し、もとの原料にリサイクルするための処理費用は日本では1本60円と試算されていますが、これだけの金額が商品に上乗せされると、リユースのきくリターナブルビンを使った商品の方が安くなります。だから、ドイツの上乗せ額は不明ですが、リユースを重視するという法律の原則だけでなく、商品の価格に上乗せするという経済政策がセットとなって、リユースのビンが増え、ペットボトルが消えていったのでした。

 日本の場合、容器包装リサイクル法が1995年に制定されたにもかかわらず、ペットボトルや紙パックは増え続け、従来、日本のリユースの優等生で世界に誇るべき一升瓶のリユースのシステムがビンが減ることで存亡の危機を迎えているという現実をひきおこしてしまいました。

 このようになった原因はペットボトルのリサイクルにかかる費用のうち、大部分を占める回収、保管費が自治体の負担になっていて、事業者負担が非常に軽いからです。その結果、事業者はペットボトルを使った方が得だということになってしまいました。

 この現状に対して、利用者側や自治体は消費者が選択しないからだと言って、消費者に責任を転嫁しています。ペットボトルも消費者が買わなければ市場からなくなる、というわけです。しかし、この発想は転倒しています。事業者や自治体は消費者に対して、環境によい商品なら高くても買いなさいといっていますが、これは環境によい商品だからこそ安くするという法律的誘導をすべき国と自治体がその責任を放棄し、そして、事業者はよい商品をつくるという責任を放棄していることになります。

4)ごみ対策の原則


 ドイツの事例に学び、そして日本の現実を反省することから、協同組合のごみ対策について考えてみましょう。

 まず、第一に、ごみ問題を解決していく循環型社会を形作る主役は、市民ではなく事業者であるということを確認しなければなりません。主役は事業者であるという観点から、日本の現行の法律とリサイクルのシステムは作り直されねばならないのです。

 第2にごみ処理費用やリサイクル費用は税金や消費者の直接負担ではなく、商品の価格に上乗せすべきだということを経済政策の原則にしなければなりません。例えば、塩ビのラップにしても、焼却炉からダイオキシンを出さないようにする費用を按分して上乗せすればよいのです。こうすれば事業者も本気になってポリラップを改善しようとするでしょう。

 第3に、循環型社会の原則として、廃棄物についてはまず、まず、発生抑制(リディース)を最重要視し、次に再使用(リュース)を考え、それがうまくいかない場合にはじめて、リサイクルを考える。有害物質については再生利用するよりも、隔離して保管する方が望ましいという考え方を採用しなければなりません。

 第4に協同組合も事業者であり、循環型社会を形成する主役です。市民について言えば、ごみ問題についての数多くの市民運動や、また、協同組合に参加することで、はじめて主役として登場できるのではないでしょうか。そして、日本のごみ問題については、処理場の設置に反対する運動をはじめとして、多くの市民運動があり、それが行政や事業者のとりくみに大きな影響を与えてきました。そして、今、協同組合に集まる市民が主役として登場することが問われています。

5)協同組合の課題


 協同組合のとり組みとして第1に問われるのは、今日のごみ処理システムから、循環型社会へとどのようにして移行させていくのかを明らかにすることです。

 今日の現状は家庭から出る一般廃棄物は自治体が税金で処理し、産業廃棄物は業者が処理費をもらって引き受けています。これを逆転させることが必要だという見解があります。生ゴミ以外の家庭ごみが、色々な法律によってリユース、リサイクルの輪にのせられていけば、事実上、税金で回収をひき受けていることの無駄が明らかとなってきます。生ごみは自治体の処理でよいとしても、それ以外のものは事業者が処理することが可能となっています。

 また産業廃棄物は現行の市場にまかせるシステムでは高く引き受けて不法投棄するという現状をますます悪化させるだけです。有害廃棄物を含む産業廃棄物は公共の処理場できちんと処理し、処理費用を業者に負担させる方がずっとよいでしょう。

 この問題は、法律の改正を避けて通れません。協同組合としては、現行法の改正の方向性をも明らかにしていくべきでしょう。

 次に、リサイクルやリユースのための費用は価格に上乗せするということの意義について、明らかにし、世論をリードし事業者と国とを説得していくことが重要です。この事業者による総費用の負担が実現するだけでも、ごみ問題はずいぶん改善されることでしょう。

 最後に協同組合は市民の事業であるという特徴を生かすことが問われています。主役だとおだてられながら、事業者や自治体に動員されているという現在の市民が自ら、出資し事業をおこす事業主体としての意識をもつことで主役としての役割を担うことが可能となってきます。そして、今日「循環型社会を形作る主役」の役割は、国のごみ行政のあり方を根本から変えていく運動に取り組むことです。その上で、事業体としての自らのごみ問題へのとり組みの方針を循環型社会を先取りしたモデルとして具体化していくことでしょう。さしあたっては、リディース、リュース優先のとり組み、リサイクルについては、リサイクル関連事業者とパートナーとなることが課題となるでしょう。そして、協同組合が、ペットボトルや紙パックをリターナブルビンに変えていくことが社会全体としては発生抑制としての意義をもち、協同組合に集まる市民が国や事業者に対する説得力をもつことにつながっていくでしょう。




Date:  2006/1/5
Section: 協同組合のごみ政策
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