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ワーカーズにとって主体とは

1）「お客さん」とは

　サポートセンターが何故よすみの住宅の事業に関わるのかを明らかにすべく、いくつかの文書を書き、18日の世話人会で報告しました。その時の討論で議論すべき新たな問題が出てきています。
　「自衛のためのプロジエクト」で私は、サービスを受ける側が「お客さん」のままではニュースタートの活動はうまくいかないと書きました。その時ワーカーズとしてNSPを担当しているメンバーから、私自身がNPO法人の役員ではないので、ニュースタートとの関係で「お客さん」になっているのではないかと指摘されたのです。
　もともと私が「お客さん」という言葉を使ったのは、生協のケースを念頭において、消費者である組合員が、組合員活動を担わずに単なる買い手になっている、という事態を指したものです。だから、消費者ではなく、働き手であるワーカーズの場合にこの言葉はあまりぴったりとはこない。むしろ働く主体が管理と経営と働きの主体となれていないという事ですから「お客さん」というより「雇われ意識」を克服できないこと、と捉えた方がいいでしょう。

2）ワーカーズにおける主体とは

　ワーカーズの働き手が、管理と経営と働きの主体となれない、というとき、ワーカーズにとって主体とは何か、と言う事について明らかにしておくことが必要でしょう。私はそれは協同主体であり、個々の働き手同士の間に形成される一つの社会的主体だと考えています。普通は主体というと個人のことであり、自立した個人が協同し合う、というのが協同主体のイメージです。しかし良く考えてみれば、自立した個人が先にある訳ではなく、個々人の間に協同主体を形成していくことで個人の自立も達成されていく、と言う事が本当の所ではないでしょうか。
　そうだとすると、メンバー個々人による相互の関係の作り方が、社会的な協同主体の形成に関わっていることがはっきりしてきます。私はNSワーカーズにとっての転換は、メンバー個々人が協同主体の形成という観点からお互いに関わりあえるようになることだと考えるようになりました。

3）主体解体の例

　ワーカーズを作った時メンバーの相互の関わり方がワーカーズの主体の内実を決めてしまう、この事態はいつも進行しています。例えば、問題を組織的に提起するのではなく、メンバーに個人的に組織への不満を話して、なんとなく不満にもとづいて人間関係を作ることは出来ます。実はこれは会社に雇われている人の普通のパターンですね。雇用されておれば仕事についての不満を組織的に提起することは不可能に近い。だから不満にもとづく連合を作って経営者や上役にプレッシャーをかけると言う事になります。ワーカーズでこのような関係が作られてしまえば、それは協同主体を解体していく方向に作用するでしょう。問題があれば不満としてではなく組織の問題として、会議や文書で組織的に提起すべきだと考えます。

4）NSPの仕事とは

　NSPの場合、働きかける対象は引きこもり当事者という人間です。だからこの仕事はNSPの対象をどう位置づけるのかがはっきりしていないと大変難しい仕事だということになります。私は、当事者を「お客さん」としてあつかうとかえってしんどさが増すように思います。「お客さん」の要求に答えなければならないからです。そうではなく、当事者を自衛のためのプロジエクトの潜在的主体として捉え、当事者が主体となっていく過程をサポートすると考えたらどうでしょうか。そしてこのように当事者を位置づけることと、NSワーカーズの主体を形成していくこととは連動しているように思います。

Date: 2006/1/5
Section: 現場から3
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