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ニュースタート関西掲示板より（A）哲学は効くか

1）人は皆哲学者である

　全ての人間は哲学者として生を受けている。ただこのことに気付く人は極く少数である。何かにに悩んでいる人は、その時点で哲学をしているのだが、自分流儀でやっているため、哲学をしていることに気付かない。
　自分が哲学者としても生きていることを発見しよう。ひよっとするとこれは副作用のない、よく効く「薬」かもしれない。[2002/08/22 00:38:13]

2）ピアジェの哲学批判

　いま発達心理学の大家ピアジェの『哲学の知恵と幻想』という本を読んでいます。これは私が今までお目にかかったことの無い変な本です。でも「哲学が効くか」というテーマの答えが書いてありそうです。今回は前振りだけにします。[2002/10/16 00:08:21]

　ピアジェは科学的心理学をやっていて、哲学者が科学的な理論を知らないままに心理学がどうあるべきかについて発言し、規範を提示していることに対して、反論しているのですが、どうも科学自体が形而上学と一体になってしか存在できないことに無自覚なようです。科学自体がイデオロギーとしてしか存在しえない理由は、科学の個々の理論が歴史的な制約を受けているにもかかわらず、それが超歴史的な真理であるかのように自己主張している所にあります。人間にとって永遠なものを探求するのが形而上学だとピアジェは考えているのですが、科学は自らがえた理論を真理だと主張している訳ですから、この点では形而上学ですね。この事とは別に、ピアジェは哲学の効用をそれが知恵である所にもとめています。これは正しいと思います。今日の所はここまでにします。[2002/10/18 23:37:40]

3）ミードの自我論

　2日の研修会でミードの社会心理学を取り上げました。面白かったのは、ミードが自我の形成について、それを社会的なものと見なし、他者の態度を取得すると言う事をメインにしている事でした。この掲示板でも人と付き合えないという意見が書き込まれていますが、ミードが生きていれば、この事態を他者の態度を取得できない事として解釈するでしょうね。もしコミュニケーションの不全が他者の態度を取得できないと言う事によるとすれば、解決の方法が見えてくるような気がします。[2002/11/04 00:05:13]

4）浜田寿美男は面白い

　心理学の森をさ迷っていて、やっと自分の好みの心理学者を見つけました。浜田寿美男さんです。『発達心理学再考のための試論』（ミネルヴァ書房）は面白かったし『ピアジェとワロン』には啓発されました。その他にも沢山の著書があります。ニュースタートで講演会でも企画したいですね。
　ところで浜田さんによればワロンはピアジェとは違って、人間を生まれた時から類的な存在として捉えていたとのことです。その根拠は情動による共感です。これは下手をすればナチスの大衆操作主義の道を開いてしまいますが、もっと別の、新しい文化の伝染という文脈で捉え返すことが出来そうです。文化を創ると言う事は正攻法では出来ません。というのも文化は生活の匂いのようなものでどの生活がどのような匂いを発散するかはやってみなければわからない、という所があります。生活を変えれば新しい文化が生み出される、これはほぼ確実に言えるでしょうが、この試みはニュースタートで既に始まっています。どんな匂いがしてますか。[2002/11/07 23:37:59]

　浜田さんの本を読んでの感想ですが、引きこもりはピアジェの発達論への批判だ、という事です。どういう事かといえば、ピアジェの発達論は日本の教育論のバックボーンになっているようです。それは子供を個人と見て、彼がどのようにして科学的な論理を身につけていくかを後ずけているのですね。ところがワロンによれば、子供は個人ではなくて、他者との共同関係の中で生きているのですね。この点での欠如が引きこもりの原因のように、私には思われます。ということは、世間がピアジェ的観点で教育してきた結果引きこもりが生まれていると言う事ではないでしょうか。[2002/11/08 23:00:18]

5）ワロンに注目

　しばらく書きませんでしたが、この間ワロンを読んでいました。ワロンはピアジェと違って人が姿勢を取る動きに注目し、それが表現する表情が他人に伝わるという事実を非言語的コミュニケーションと考え、そしてこの動きが独自の神経中枢を持っていると言う事にもとづいて、姿勢が情動を作ると言う事を、人間の社会の結びつきを紡ぎ出すものと捉えたのでした。知識だけでは人間の社会を紡げないし、知識が社会の中でしか維持発展させられないと言う事を考慮すれば、情動による社会的結びつきの形成の方が知識の形成の根にあることになります。これは大変面白い考え方です。いずれワロンの説を紹介する場を作ります。［2002/12/14 00:28:57］

Date: 2006/1/5
Section: 現場から2
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