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18.こぼれ話（その10）新しい社会運動と地域通貨

　ここ数年の間に日本でも多くの地域通貨が始められれいます。その運動に関わった担い手達の感想などが時に各団体のホームページにアップされていたりします。
　私が、同感だったのは、三重県で地域通貨の普及に取り組んでいる人たちのもので手元に文書がないので、うろ覚えですが大略次のような内容でした。

　地域通貨を始める前には、こんないいものが出来る、こんな楽しい事が起きる、あるいはこんな正しいことが出来る、という期待をいっぱいふくらませてがんばるのですが、出来上がったものは、非常に地味で、一見したところ、味も素っ気もないものなんですね。そういうことがわかるとドット疲れが出て、自分は一体何をしているのだ、という思いに捉われるのですが、しかしよく考えて見れば地域通貨は日常的な交易のシステムであり日常生活そのものの一部ですから、地味で当たり前なのですね。このことがわかると、当初の意気込みとはまた別の考え方が出てきて、この地味なものを継続させようという意志が出てきます。

　私にとって、このレポートは非常に教訓的でした。日常生活を大勢の人たちが一寸変えるだけで実際には大変な事が起こります。地域通貨を立ち上げる時には、無意識のうちに、大勢の人たちが参加することを前提に絵を描いていたのですね。ところが出来てみると、少人数の参加者しか居ませんから、地味なものにとどまってしまいます。そこでの問題は、大勢の人たちがどのようにして参加していくのかということについて検証することが必要だったのですね。

　地域通貨に関して言えば、大勢の人たちが、会社や国に雇われて働いている限り、ニーズはありません。大勢の人たちが働き方を変えていかなければ、地域通貨に大勢の人たちが参加するということにはならないでしょう。逆にいえば、働き方を変えている人たちが居る地域では、地域通貨は生活に根付いたものになるでしょう。すでに出来上がっている地域通貨の地域を大切にしながら、働き方を変えていく新しい社会運動と結びつくことで、地域通貨の存在意義が高まる事を期待しています。

Date: 2006/1/5
Section: 研修会こぼれ話
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