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14.こぼれ話（その6）政治運動と社会運動

　もう一つの研修会「実践」で日本の労働者生産労働組合について調べることになりました。

　生活クラブ生協から生まれたワーカーズコレクティブ運動は、20年後の今日、多くの生協に波及し、組合員12,000名、事業高73億円にのぼります。他方、これより数年先に全日自労から生まれた事業団は組織の協同組合化をはかりながら、今日では事業高192億円に達しています。社会運動では10年、20年単位で見ていかなければならず、人々はそこに生涯をかけてかかわっているのですね。

　これに対して、集会やデモによって組織される政治運動は、非常にスパンが短いですね。例えば私が経験した60年安保闘争が始まるのは一年前からですし、集会やデモの準備は半月から一ヶ月です。政治運動は短期間で成果をつみあげていかないと何も出来なかったことになります。

　でも、政治運動でも人材を発掘して後継者をつくるとなると大変なんですね。60年安保闘争のあと、わずかなメンバー以外は政治運動から去っていき、残ったメンバーは、何とか労働者を獲得しようとがんばったのですが、7年かけて一人か二人という状態でした。ところが、70年安保闘争が2年前から始まると、大衆運動が起きてきて、労働者がどんどん政治運動と政治組織に参加してきたのです。大衆運動は政治組織がひき起こそうと努力しても起こるものではなく、起こるときには政治組織がなくともおこってしまうのですね。
　しかしながら、60年安保闘争と70年安保闘争に典型的に見られた大衆運動の発展のパターンは、以降には見られなくなっていきます。日本の社会が70年までの20年間ですっかり変わってしまったのですね。
　従来の政治運動は社会を変えるためにはまず政治を変えなければならないという立場から取り組まれていました。でも、社会の方がどんどん変わっていって、このような立場からの従来の政治運動が依拠していた基盤をすっかりほりくずしてしまったのですね。

　社会がどのように変わっていったかをきちんと見ておくことは必要ですが、これは今後の課題とし、今日、社会運動が何故拡大していっているか、ということについて私見を述べます。その理由は新しい社会運動が「もう一つの働き方」を作り出そうとしているからです。

　「もう一つの働き方」は今日の経済システムの中ではまだ極少数ですが、しかし、今後ますます増えていくものです。そしてそれが増大していくことに応じて、社会は、また徐々に変わっていくでしょう。日本経済が高度成長していった80年代半ばまでは社会の変化は効率と利便性の追及であり、小経営の淘汰と大企業の寡占化でした。この過程の進行のなかで、労働者階級も受益者となり、伝統的な政治運動に魅力を感じなくなったのでした。ところが今日の社会の変化は、この動きが極みに達し、その反動が起きている中で進行しています。今日の社会の変化にはもちろんアメリカの戦争への協力にみられるように色々な方向性がありますが、しかし、持続可能な社会をめざして社会を変えていく方向性も開かれています。

　「もう一つの働き方」を担うことで人々は社会を持続可能な社会へと変えていく主体として行動していることが実感できるでしょう。そして、このことが、新しい社会運動の拡大の大きな要因だと私は考えています。

Date: 2006/1/5
Section: 研修会こぼれ話
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