働き方の分類

2006年6月10日

１）はじめに

　スローワーク協会も従来のNSワーカーズ時代の事業に加え、スロースペース、就労倶楽部、カフェコモンズ、光愛喫茶･売店、というように事業が拡大し、さらに新しく寮事業が加わることで、色々なタイプの働き方が生まれています。それぞれの違いを認め合った上で協同していくために、働き方の分類を試みてみます。

２）働き方の違いに注目した四つの労働様式

　労働様式の分類方法には色々あります。賃労働（雇用労働）、自営業、請負労働といった経済的関係に注目したものから、労働の職種に注目したものまでさまざまです。ここでは体の動かし方に注目してみましょう。

＊現業部門，これは製造業や流通業の現場での労働で、労働時間を尺度として量りやすく、雇用労働に適したものでした。しかしこの業態がコモンズや売店で始まり、経営参加を通して新しい働き方のイメージを探っています。

＊間接部門、これは公務員や企業の管理部門の労働で、事務所での働きに相当します。

＊委託業務、これは業務委託で広くは今はやりの派遣業なども入るのでしようが、これは労働法的には働き手に不利なもので、若年労働者が派遣で使われていることについては大きい問題があります。個人的に委託される形は個人営業で、従来これに近かったのはNSP事業部です。

＊ケア労働、これはそれまでの分類の仕方とは異なって、仕事の質を取り出しています。看護や介護がそれですが、協会では寮生サポートがこの労働に分類されるでしょう。

３）ケア労働の新しい形

　ケア労働を働き方の分類に入れたのは、この労働の新しい形を考えるためです。そしてケア労働の新しい形を考えることは、従来のそれの批判を含んでいます。これを考える切っ掛けは、引きこもり支援について多くの団体がサポートする側とされる側を固定化し、ある種の教育活動と捉えているのに対し、協会の場合は共に新しい働き方を実現していくパートナーとして考えていることと関わっています。

　看護士と患者、介護者と要介護者、という区分からは、労働者と労働対象との区分が出てきます。労働者は患者や要介護者に働きかけるのです。しかし協会のように両者をパートナーと考えると、労働者と労働対象という区分は通用しなくなります。

　労働者と労働対象との区別がなくなれば、労働も崩壊し、それは両者の間のコミュニケーション活動になっていきます。そして引きこもりに限定すれば、このコミュニケーションは社会参加の場であることになります。つまり双方の関係において、そこに社会を形成することが問われているのです。

４）新しい分類

　ケア労働の新しい形を踏まえるならば、働き方の新しい分類が可能となります。現場での労働、事務的労働、請負的労働、そしてケア活動。最後のものは労働に分類できませんので、働き方の分類としたほうがいいでしょう。

５）新しい分類の意義

　直接お金を稼ぎ出す現場の労働や請負労働、そして組織の維持に必要な事務・管理労働、これらについて支払が発生することは、今の雇用労働の世界でもそうなっています。ケア労働も人間を労働対象とすることでかろうじて、現場の労働の枠に入れこんでいます。しかし協会がこれから取り組む活動としてのケアについて、どう考えたらよいのでしょうか。

　これは直接的に金銭に結びつくものではなく、具体的には寮費から賄われることになりますが、協会のミッションからすれば、他のどの働き方にも負けず、重要なポイントを占めています。引きこもりの人達との間に社会形成していくことが出来ていけば、協会のミッションは半ば実現されたことになります。

　費用対効果を考えれば、恰も空費のように見えることでしょう。また働き手からすれば、労働ではなく活動ですから時間を尺度とすることには無理があります。この現時点では曖昧な活動こそ、21世紀の働き方の基本的な方向性を示唆しているように思うのは私だけでしょうか。

　寮生サポートにはこのような問題が含まれており、したがって協会が担当者の活動に生活給を支払うことはある種の実験的取り組みとなるでしょう。私としては是非この実験に取り組み成功させていきたいと考えています。

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Author: admin Published: 2006/8/3 Read 3269 times