　ワーカーズ・コレクテイブサポートセンター（準）を2002年6月に発足させて以降、私はニュースタート関西の皆さんと、株式会社に代わる「もう一つの働く場」をつくる、という共通の目標を持って10ヶ月ばかり一緒に活動してきました。そこで感じた事について述べてみます。
　もともと、ニュースタートパートナーとして仕事をしている人たちの職場をワーカーズ・コレクテイブ方式で運営していきたい、という提案をうけ、まずサポートセンターを創る事から始め、2002年10月には協同組合NSワーカーズが設立された事は周知のとうりです。以降パートナー活動や例会や鍋会やドミトリーや農業学校などの運営が、サポートセンターと共同でなされてきました。
　6ヶ月の活動の中で判明してきた事は、引きこもりの当事者やその家族が「お客さん」として参加している間は、「もう一つの働く場」の試みに限界があるのではないか、と言う事でした。

2）社会病理への自衛のプロジエクト

　周知のようにニュースタート関西は、引きこもりは病気ではない、と考えています。いい学校を出ても、株式会社や公務員として働けるという人生のコースが乱れてきて社会に出て行く場がない、という現在の日本社会の病的状態が引きこもりを生み出す根本原因だとされています。
　引きこもりの人たちには、本当に働く場が与えられていない。引きこもりから脱出して今の社会に復帰できる人は少数です。ニュースタートの活動はこれを目標にするのではなく、当事者達が自ら働く場を創り出せるようにしようとしています。それゆえ株式会社に代わる「もう一つの働く場」が必要です。これはまさに引きこもり当事者達の生活を自衛するためのプロジエクトとしての意味を持っています。だから当事者達やその家族の皆さんが「お客さん」であっては自衛活動にならず、このプロジエクトに限界が生まれます。

3）問題はどこに

　お金を払った側が「お客さん」になる、というのは現在の日本社会の消費者にとっては当たり前の感覚です。お金を払った側が利潤を得たり利子を得たりするのは会社を経営する側の事です。ところが消費者が経営に参加するというシステムがあります。協同組合がそうです。
　現在の社会は商品経済社会で、消費者も企業家も社会全体の事を考えても仕方なく、自分の利益になる事だけを考えて行動すれば、市場という見えざる手に導かれて万事がうまく行く、と言う事でやってきました。しかし今これが「神話」になってしまって、見えざる手は働かなくなっています。これが実は社会病理のもとになっています。そうだとしたら私たちは「社会参加」について真剣に考え実行する事を迫られています。

4）社会参加とは

　「社会」というと普通個人の外にあって、それに個々人が参加しているというように思われています。今の日本の社会システムが個々人を「お客さん」として社会参加させるように出来ているのでこのように考えてしまいます。しかしよく考えてみれば、個人の参加の仕方が社会を作っていると思われます。
　株式会社に雇われて働く、という意味での社会参加は、文字どうり個人の外にある社会に参加すると言う事になります。これはこれで今の社会病理を生み出す原因を支える事になります。社会病理を何とかしたいと考えるなら個人が社会参加の仕方を選択するという方法があります。例えば「もう一つの働く場」を主体的に選択すれば、個人の外にある社会への参加、という参加の仕方が変えられ、そこに小さいとはいえ新しい社会を創り出す事になります。というのもこの関係では「お客さん」としての社会参加ではすまなくなり、お互いが関係を作り出す事で社会の中身を作る事になるからです。

5）何が問われているか

　引きこもり当事者達やその家族の皆さんたちが、ニュースタートの活動をどのように捉えているのだろうか。それは当事者達の生活の自衛をサポートするプロジエクトとして受け入れられているのだろうか。まだだとすれば、積極的に自衛のプロジエクトへの参画を要請すべきではなかろうか。
　パートナーの依頼にしても入寮にしても、家族の出費が自衛のプロジエクトを育てる費用として生産的に活かされている事を示していこう。
　パートナー依頼から入寮へ。この費用が働く場作りに貢献。その結果当事者にとっては「もう一つの働き方」を体験。支えられる側から支える側への移行。家族にとっても経済的に支えるだけでなく、「もう一つの働き方」をサポートする事で、新しい社会参加の仕方を実現する。

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Author: admin Published: 2006/1/5 Read 2833 times

自衛のためのプロジエクト サポートセンターから見たニュースタートの活動

1）はじめに

2）社会病理への自衛のプロジエクト

3）問題はどこに

4）社会参加とは

5）何が問われているか

自衛のためのプロジエクトサポートセンターから見たニュースタートの活動