2002.2.27　榎原均

　前回の「階層の運動」を事前に検討したとき、階級と階層はどう違うのか、という疑問が出されました。

　階級は階級闘争という言葉に象徴されるように、利害の対立している社会集団が念頭におかれます。他方で、階層闘争といった言葉は使われていません。
　階級とは何かという事については、次のレーニンの定義がよくまとまっています。

（レーニン「偉大な創意」）
　階級とよばれるのは、歴史的に規定された社会的生産の体制のなかでしめるその地位が、生産手段にたいするその関係（その大部分は法律によって確認され、成文化されている）が、社会的労働組織のなかでの役割が、したがって彼らが自由にしうる社会的富の分け前をうけとる方法と分け前の大きさが、他とちがう人々の大きな集団である。
　階級とは、一定の社会経済制度のなかで占めるその地位が違うことによって、そのうちの一方が、他方の労働をわがものとすることができるような、人間の集団を言うのである。

　このレーニンの定義は経済的な意味では、今日も有効で、資本家と労働者との区別を明らかにしていますが、しかし、階級意識という意味では曖昧になっています。

　資本家は資本を提供し土地所有者は土地を提供し、労働者は労働を提供して生産を行い、剰余をそれぞれ提供したものに応じて分配する。このような考え方が主流となり労働者の側でも搾取されている、という意識をもっている人たちが少数派となっているのです。
　このような現実をふまえて、一定の社会的地位を共有する人々の集合体に階層という言葉が使われるようになりました。

　一時期は、日本人の9割が「中流家庭（中間階層）」の意識をもっていたこともありました。でも、今日では、この「中流家庭（中間階層）」が分解をはじめ、色々な階層が形成されていっています。

　階級という視点からすれば、今日の社会階級は資本家階級、土地所有者階級、賃金労働者階級、小商品生産者階級、の四つに区分されます。
　この視点からは中流意識をもっている一流企業の労働者もアルバイトでしのいでいる「フリーター」も労働者階級に属していることになります。
　だから階級的視点を強調すると、階層意識にぶつかって、リアリティが欠けてしまいます。

　昔、労農同盟という言葉があり、これはいまでは死語ですが、しかし、中間階層が分解しはじめているとき「フリーター」の階層に属する人たちが、自給をめざして有機農業に取り組んでいる農民層と結びつきはじめています。
　「労農同盟」というより、「いのちの同盟」と言ったほうが良いかも知れません。

　層としての運動という視点からは、このような見通しが出てきます。

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Author: admin Published: 2006/1/5 Read 2914 times