　アソシエ21の雑誌６号を見て気になったのは、「マルクスの労働価値説は間違いだ」という主張が証明もなく述べられていたことでした。ＮＡＭの方でも、鈴木健さんが労働価値説を「蒙昧な思考」と言って否定しています。

　でも、理論が真理かどうかという問題は、社会科学にあっては実験で検証するわけにはいきませんから、日常的な人間の実践にもとづいて議論する他はないのですね。
　労働価値説は、リカードを読めば明らかなように、雇われている労働者が雇い主に労働力を提供することで、生活資料に対する購買力をもつ、という現実に基礎づけられています。この現実は今日でも変わっていません。だから、労働価値説を批判するなら、無産者が非労働で生活資料を買えるという実例を示してもらわないと、単なるスコラ論議（マルクスフォイエルバッハ･テーゼのⅡ）に陥ってしまいます。もちろん、インターネットの発達で、従来は労働者の外部に資本として対立していた労働手段が、労働者の肉体に付属するようになり、全ての人間が自営業者になる可能性がある、ということは言えないことはありません。（ネブリはこんなことを言っていましたね。）つまり、資本・賃労働関係が止揚される可能性をこの方面から描くことができるでしょう。でもそうなればかえって、労働が交易の尺度としてクリアになる、というのはエンゲルスの説でしたが、たしかにこの場合、生産価格はなくなり、労働価値通りの交易が起こる可能性の方が高いのではないでしょうか。

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2001/05/13

ヘーゲル弁証法をひっくり返す

Author: admin (9:00 pm)

　とうとう、ヘーゲルの弁証法をひっくり返す手がかりがつかめました。５月12日の第３次ＰＣ講座第２講で、「存在と意識」というテーマで存在の様式と思考の論理との絶対的他者性、という見地から、ヘーゲルの『哲学史』をとりあげてみました。

　ヘーゲルは、存在の真理態を運動に見出し、それを存在－無－成、というトリアーデにまとめ、そして、この運動を思考の運動であると同時に存在の運動でもあると見たのですね。カントはきっと墓の中で、「存在の運動など把握できず、お前は、お前の概念が自分の思考でありながら客体に属するかの如く見えてしまう超越論的仮象のとりこになっている」とつぶやいて笑っていることでしょう。
　このカントの見地を土台にして、ヘーゲル弁証法を見直すとどうなるでしょうか。存在するものの運動と思考の運動の異型性ということが出発点になります。そして、カントなら、「理性の法則としてある思考の運動法則があたかも存在するものの運動に具わっているかの如く想定するところからしか、存在するものの運動については、認識できない」と言うでしょう。でも、これだけでは味気ないですね。せっかく、ヘーゲルが思考の運動を弁証法として描き出すことに成功したわけですから、そして、カントはヘーゲルの弁証法は知らなかったのですから、これで終わってしまうのはもったいない。

　カントのコペルニクス的転回をヘーゲルの弁証法に適用すること、そうすると、ヘーゲルが存在そのものの運動と見なした思考の運動が、実は意識の運動であり、そしてそれが、存在そのものの運動という仮象をとっているとするならば、問題は運動を停止させることにあるのではないでしょうか。ということで、これ以上の展開は雑記の範囲を超えます。次の「哲学の旅」は「ヘーゲル弁証法の転倒」です。ご期待ください。

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2001/04/29

「論争」のページ

Author: admin (9:10 pm)

　ホームページを開いて１年以上経過しました。そしてやっと議論が起きてきています。共産主義をめぐる論争については、共産主義フォーラムで紹介していますが、それ以外にも、ホームページの諸論文についての批判なども寄せられるようになりました。そこで、新しく「論争」のページをつくり、皆さんからの投稿を募ることにしました。また、従来から設置してありました直接書き込みの出来る「メッセージボード」を「掲示板」と改題し、どんどん意見（1,000字以内）を述べていただくことにしました。よろしくお願いします。

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2001/04/16

SUセミ・レクチャー

Author: admin (9:10 pm)

　スタディー・ユニオンのセミ・レクチャーが、4月15日にあり、そこでカントの根本思想について問題提起させてもらいました。主催者の思或とは異なって、長時間の講義になってしまいました。「カント研究序説」の報告では芸がないので、超越論的弁証論の批判を試みてみたのです。もしこんな場が与えられなければ序説のみで終わっていたはずの私のカント研究でしたが、講義を準備することで、物自体論の批判について何か書ける見通しがつきました。いづれ暇をつくって書いてみます。とりあえずは当日のレジュメ「カント研究」を哲学の旅のところに出しておきます。

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2001/04/08

ローティ

Author: admin (9:10 pm)

　やっとローティ論を書き上げました。ローティの公ー私の切断論は、私が構想している協同主体論と重なるところがあって取り組んでみましたが、書いているうちにローティのレトリックが鼻につくようになってしまいました。でも有難かったのは、デイヴィドソンを始めとするアメリカのフィールド言語学についての知見を得られたことでした。サビアやウオーフに始まるアメリカ言語学については以前から関心があったのですが、ローティによるデイヴィドソン解釈を知って、何となくイメージがつかめてきました。これで、レヴィナスの言語論について何か書けそうです。あとパースについても取り組んでみようと思っています。

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2001/03/17

「廃原発にむけての提言」作成プロジェクト

Author: admin (9:20 pm)

　３月17日に開かれた「廃原発にむけての提言」作成プロジェクト主催の第３回シンポジウムで室田武さんより「天然ガス時代における原発の位置」というテーマで講演していただきました。その内容は、エネルギー問題の常識をくつがえすもので、大変興味深いものでした。

　第１点は、石油、石炭、天然ガスは化石燃料と呼ばれているように、生物起源である、とするのが通説ですが、これに対して、アメリカの天文学者ゴールド氏が唱えている無機成因説（『地球深層ガス』サイエンス社）を支持すると述べられたことです。この見地からすれば、原発推進側の論拠の一つであった、化石燃料有限説は根底からひっくり返ります。

　第２点は、日本列島は天然ガス（いま話題になっている、技術的に取扱いが難しいメタンハイドレートではない）の宝庫であるという情報の提供でした。これについては恐らく、石油公国は知ってて隠しているのですね。

　このあと、提言作成の基本的方向性についての討論が盛り上がりましたが、これについては、別の機会に報告します。

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2001/02/25

次の研究課題と共産主義研究フォーラムの開設

Author: admin (9:20 pm)

　カント研究序説を書き終えて、再びレヴィナスの続きを書こうと、レヴィナスの言語論を検討しようとしたのですが、どうも彼の言語論には違和感を感じていました。そのようなとき、ローティの『偶然性・アイロニー・連帯』を手にする機会があり、私が追求している協同主体論の領域の問題をリベラリズムの立場から追求していることがわかりました。そこで、レヴィナスの言語論にとりかかる前にローティの研究を先行させることにしています。
　また、色々な人々の努力で「21世紀の社会運動の綱領草案」についての議論が始まっています。それで、共産主義研究フォーラムを新たに開設し、綱領草案について批判を提起して下さった方々の論文を紹介すると同時に簡単なコメントを付すことにしました。フォーラム開設まで一寸時間がかかるかも知れませんがご期待下さい。

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2001/02/01

カント論できました

Author: admin (9:20 pm)

　カント論が出来ましたので、2月中頃には「哲学の旅」に掲載します。
　Kyoto LETSが正式に発足してＨＰもつくられ、また、ニュースタートのＨＰも準備されています。
　office-Ebaraは、それぞれのフォーラムから重複した論文を削除し、新しく再出発します。いましばらくお待ち下さい。

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2001/01/24

カントについて

Author: admin (9:20 pm)

　今カントに夢中になっています。この間、本当に細切れにされた時間の中で、何とか論文をまとめつつあります。カントの超越論的弁証論での仮象の弁証論は、本来、科学的世界観の批判として生かされるべきでした。ところが、カント自身の解法のまずさ（実践の契機を導入したこと）もあって、仮象批判の思想史上の革命的意義が忘れ去られていたように思われます。
　私は、カントの解法には反対ですが、超越論的仮象の批判は、マルクスの物神性論と並ぶ、思想史上の偉大な成果だと確信するようになりました。
　ところで、ヘーゲルのカント批判を見ると、ヘーゲルは、カントが物自体という他者を論じていることが気に入らなかったのですね。とすれば、絶対的他者論でレヴィナスがカントを体系的に研究していないことを残念に思わざるを得ません。カント論、どんなものが出来上がるか、まだ行方は知れませんが、ご期待下さい。

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