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資本蓄積と階級権力の関係について

1:資本蓄積と階級権力の関係について
田中 01/11 13:30
ハーヴェイの『新自由主義』において、新自由主義は資本蓄積の再活性化にはあまり有効でなかったが、階級権力の回復には大いに効果があった、と述べています。経済成長が低成長であることが前半部分の論拠であるのですが、ではなぜ資本蓄積が低調であるままなのに、資本家の権力が増大したのか、という疑問が生じます。私の見解を以下で述べますので、ご検討ください。
まず資本蓄積の増大と経済成長は同じものなのか、という問題です。GDPやGNPで表されるものは、一国で生産された総価値量の指標であり、その増減は資本としての価値量の増減をある程度反映していると考えられるでしょう。資本の蓄積を拡大再生産として考えるならば、資本価値の増大=資本蓄積と考えられます。しかし、資本価値=剰余価値ではないことを考えれば、搾取率が増大すれば、資本の総量が低下しても剰余価値量は増大するでしょう。低成長に関わらず企業業績が順調に拡大しつつ、賃金は低下しいていくという今の日本の状況は、まさにこのようなことを表しているのではないでしょうか。剰余価値の増大が資本蓄積の最大の目的であることを考えれば、新自由主義はこの点においても有効だったとは考えられないでしょうか。
あるいは経済の金融化によって、剰余価値が金融エリートの手に集中しているがために、彼らの権力が増大したと考えられるのでしょうか。ハーヴェイは資本権力の移動について述べています。剰余価値の総量は変わらなくとも、その分配の仕方が変化したことによって、権力の回復が成功した、このようにハーヴェイは考えているのでしょうか。しかし、やはり現実経済の成長なしに利子生み資本のみが成長するとは考えにくいような気がします。どうなのでしょうか。


2:Re: 資本蓄積と階級権力の関係について
榎原 均 01/12 21:37
ハーヴェイは経済成長がなかったと言っているのは新自由主義者のビジョンに対する反論としていっているだけだと思います。新自由主義者はあからさまな階級闘争を被支配階級に対して仕掛けて自らの階級権力を回復したというのが基本的主張でしょう。
被支配者階級のあいだに、階級闘争は古くなったという認識を植え付けながら彼らは熾烈な階級闘争をやっていたというのです。新自由主義者たちは資本家集団を纏めつつ国家権力に働きかけて、被支配者階級が獲得してきたさまざまな既得権を奪い返したのです。ハーヴェイが力点を置いているのは支配階級による階級闘争の帰結として今の現状が生み出されてきたということで、これは非常に傾聴に値する主張だと思います。

3:Re: 新自由主義
megumi 01/14 02:41
田中さんは、こう質問をされました。
>ハーヴェイの『新自由主義』において、新自由主義は資本蓄積の再活性化にはあまり有効でなかったが、階級権力の回復には大いに効果があった、と述べています。経済成長が低成長であることが前半部分の論拠であるのですが、ではなぜ資本蓄積が低調であるままなのに、資本家の権力が増大したのか、という疑問が生じます。

しかし、榎原さんの紹介されているハーヴェィの一文にこうありました。
「新自由主義化は、グローバルな資本蓄積を再活性化させる上ではあまり有効ではなかったが、経済エリートの権力を回復させたり、場合によっては(ロシアや中国)それを新たに創出したりする上では、目を見張るような成功を収めた。」(32頁)
この点を、榎原さんは、こう代弁したのでした。
「新自由主義者はあからさまな階級闘争を被支配階級に対して仕掛けて自らの階級権力を回復したというのが基本的主張でしょう。」

イギリスでの新自由主義の採用など「サッチャー革命」と表されますので、榎原さんに私は賛成するのですが、しかし、どうも私にはこのやり取りでは、田中さんが納得できないように思えるのです。
例えば日本での中曽根行革による、国鉄解体・民営化=国労・総評解体など、一部を除いて新自由主義であるとの認識が無く、新自由主義は、郵政民営化をした小泉からとの認識が多数を占めています。
このような多数派意見への、批判を自らのものにすることが問われていると思うのです。そのためには、階級闘争の総括として新自由主義との戦い方を学ぶことが必要です。
ベネズエラでは、IMFの押し付ける構造改革に抗する民衆の意見を代弁する形でチャベスが登場しました。その経過を示したのが次の本です。
『チャべス革命入門』(澤田出版発行、民衆社発売、1700円)
あるいは、『市場対国家』(上巻)ダニエル・ヤ−ギン著日本経済新聞社刊
などどうでしょう。世界的な新自由主義登場の歴史的、社会的背景をルポしたものです。
このような史実、社会的政治的事件の調査によって、認識が豊富になれば新自由主義について理解していくのも容易くなると思います。

新自由主義は、ことに南米、そして中米で敗色濃厚ですし、ニュ-ジ−ランド・オーストラリアでもそうです。しかし、問題は、国際共産主義運動の総括・新しい社会運動の展開の中に位置付けることでしょう。
少し余計なことに入ってしまいました。とにかくも、ベネズエラでの新自由主義との戦いの経過を調べるだけでも面白いと思うのです。
そのうえで、田中さんの問題とされる「資本蓄積と階級権力の関係」の問題をお考えになったらどうでしょう。


4:Re: 新自由主義
名無しさん 01/15 10:09
megumiさんが指摘されている日本の状況については、日本語版の付録に詳しい分析がなされています。megumiさんが言われていることを自分なりに分析すると、私も新自由主義にだまされていました。私は小泉政権の「改革」路線を階級闘争としてではなく、中間層を中心とする都市住民と農民を中心とする地方との闘争として考えていたのです。昔懐かしい「都市の論理」として、小泉を理解していました。格差拡大が一般マスコミで言われるようになってから、あるいはホリエモンをきっかけに遅まきながら感づいた、というわけです。もちろんこのホームページを知らなければ、そのままだったかもしれませんが。
付録にあるように日本における反官僚制は左翼の伝統を特徴付けるものの一つでした。また左翼が都市を中心とした勢力であったことが、反ばら撒き政治=反田中角栄政治として登場した日本における新自由主義に対する反応の遅れにつながったのでしょう。megumiさんが紹介してくだっさた本を足がかりに、さらに学習したいと思います。
以上の点を踏まえた上で、信用資本主義の進展がどのようにして新自由主義としての階級闘争を可能にし、また後者が資本蓄積にどのような影響を与えたのかを考えてみたいと思います。昨今の金融不安を見れば、ろくな影響を与えていないという結論になりそうで、この点ハーヴェイの見方が当を得ているような気がします。現在の危機をどのように乗り越えるのか、またそれが新たな階級闘争となるかを注意深く観察していかなければと、思いました。

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